外国商標登録の必要性

外国で権利を守るために。

日本で商標権を取得していても、その効力は日本国内にしか及ばないため、外国は外国で、各国ごとに商標登録手続を行い、各国ごとに商標権を取得しなければなりません(各国商標保護の独立の原則)。
つまり、日本で商標登録したからもう安心、ということではなく、事業展開を行う外国でも、きちんと商標登録しておかなければならないのです。

まず、商標。 グローバル戦略の第一歩です。

先日、中国における「クレヨンしんちゃん」商標事件に関する判決が下されました。
本事件では、有名な「クレヨンしんちゃん」について、中国で登録されていないことに目を付けた中国企業が、「クレヨンしんちゃんの図形」と中国名の「蝋筆小新」の商標を先取り的に登録してしまい、真の権利者による使用が制限されるという事態が生じていました。
本事件は、最終的には真の権利者が勝訴しましたが、解決に至るまでには8年もの期間を要し、また、7000万円にも上る訴訟費用が掛かったと言われています。
この点、真の権利者がきちんと出願手続を取っていたならば、期間にして5分の1程度、費用に至っては50分の1以下で済んでいたところです。

また、アップル社が中国企業に対して6000万ドル(約50億円)もの和解金を支払うことで、「iPad」の使用を確保した事件も記憶に新しいところです。

このように一般的なニュースになるのは実は氷山の一角で、商標実務の現場では、世界各国で同様の事件が頻繁に起こっています。
なぜ同じようなことが何度も繰り返されるのでしょうか?
その前提として、世界各国の大半では、原則として先に出願した者に権利を付与する『先願主義』が採用されている点が挙げられます。
つまり、出願は“早い者勝ち”なのです。
その“早い者勝ち”のルールがあるにもかかわらず、出願を怠っていた点については、真の権利者といえども、落ち度があったと言わざるを得ません。
近年のようにインターネットが発達し、グローバルな情報が瞬時にどこででも把握できる社会にあっては、日本で何が流行しているのか、そして、その商標が各国で登録されているのかどうかは、世界中の至る所で容易に把握できてしまうのです。
このような状況の下では、我々日本人も権利意識を強く持ち、大切な商標について外国でも逸早く出願することによって、自らの権利を積極的に守っていかなければなりません。
商品やサービスの取引が益々国際化していく中で、自らの権利を守るため、世界各国で一日でも早く商標出願を行っておくことが、国際社会において極めて重要な一手となります。

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